タイ王国の、電気工事、カーテン設置など、内装関連について情報や工事体験談を紹介しています。
今回は、バンコクの塗装業者の、ある技についてご紹介しましょう。
まずは、こちらの写真をご覧ください。これは、バンコク・トンローエリアにある飲食店(日本人向けのラーメン屋さん)の一室です。
何の変哲もない部屋のようにみえますが、実は内装業者のちょっと凝った技が用いられているのです。
いまいちど、写真をよくご覧になってください。なにかお気づきになりませんか?
壁は木目の鮮やかな材質の板をそのまま生かしてウッディーな味わいで仕上げ、窓は金属のサッシをはめ込み、床はグレーのカーペットを敷いて直に座れるようにしてあります。細かい部分では、電気関連では壁面にコンセントひとつ、飾り照明が取り付けてあり、窓の上部は板で覆って換気扇をはめ込んであります。その板は黒で塗装されています。
このように一見、普通の部屋にみえます。
ところが、ちょっと違和感を感じたので、壁に近づいてよく様子を見てみると、木の板の様子が不思議なのです。
木目が妙に左右対称になっていてきれいすぎるのです。年輪部分の同じ色合いの部分がずいぶん太くて、まるで筆で描いたような太さ…と思ったら本当に筆で描いていることに気づきました。
元は無地のベニヤ板だったと思われます。それに少し濃い色の絵の具を使って濃淡がつくように模様をつけ、木の年輪のように筋を描き入れています。そして一旦乾かした後にニスを上から塗って光沢を出すように仕上げているのです。
写真のように至近距離まで近づけば、描いたものだとわかります。なんというか職人技ですね。
日本でも、プラスティック素材の雑貨などに木目調のデコレーションをして高級感を出す、というのは工芸品から個人の趣味の工作などでもよくありますが、ここまで堂々と建築物の壁面すべてを描いていくというのには驚かされました。
職人に訊いてみると、タイランドのペンキ職人はこのようなことができる人が結構いるそうです。
昔は壁紙などが高価であり、かといって壁面全体を同じペンキでベタ塗りすると塗料をたくさん消費して高くつくため、コストを抑えるという苦肉の策の面もあったのだそうです。
さすがに壁面全体に使用すると、近くに行けば塗ったものだということはわかってしまいますが、あまり目立たない場所や、一部分に使うのであればデザインのひとつとして有効かもしれません。
また、木目調に限らず、このようにコストを抑える様々なアイデアや技術を職人はもっていたりするので、リフォームや改装の際は、ためしに相談してみるのもよいかもしれません。