バンコクで暮らしていたり、店舗やオフィスを構えている方で、今、外出先にいるという人は、火事が起こる可能性に注意して下さい。「自分の家(会社)にはキッチンはない。」「タバコは吸わないから吸い殻は捨てていない。」といっても、関係なく起こるリスクはあるのです。これから物件を居抜きで手に入れようとしている人は、改装にお金と時間をかけて入手したのに、ちょっとした対策をしなかったために火事が起きてしまう可能性があります。
バンコクで実際に出火が起きたケースをご紹介しその対策をご紹介しましょう。
スクンビットエリアで飲食店を運営しているNさんが体験した話です。
ショッピングモールに隣接して、居酒屋やレストランが並ぶ食堂街にある飲食店を、Nさんがこの物件を入手したのは半年ほど前のことで、多国籍居酒屋を始めるべく、内装工事をいれました。もともと、この施設自体は建設して5年ほどの新しいものでしたし、Nさんの方でも厨房機器や壁面も全面的に新しいものに取り換え工事を行っていました。
ところがオープン後、1か月ほどでこのようなことが起こったそうです。
「ちょうどオープンして1か月してからソンクラーン(タイ正月)時期になったので、店を4日間休みにしたんです。休み明けに店に顔を出したら、冷蔵庫の電源が落ちていて、食材が腐り始めていました。」
そしてNさんはとんでもないものを発見しました。
「どうして電気がつかないのだろうと思って厨房内を見ていたら、延長コードが燃えていたんです。」(Nさん)
厨房においてあるオーブンはコンセントから離れていたため、延長コードを使って電気をとっていたそうです。Nさんが店を閉めていた間は、オーブンの電気コードは延長コードから抜いていたそうです。
ほかになにも電化製品のプラグは刺さっていない状態だったのですが、写真のように延長コードとコンセントの間で出火が起きていたそうです。
「たまたまソンクラーン休みに入る前ということでシェフが厨房にあったかなりのものを掃除して捨てていた直後だったので、近くにはなにもなくて燃え広がらないですみました。普段だったらもうちょっと、台ふきやクッキングペーパーとかが置いてある場所だったんで、ぞっとしました。」(Nさん)
このような漏電によるボヤはなぜ起こってしまったのでしょうか。
日本でアースの取り付けなどを行っている電気工事士の方に事情を説明して理由を聞いてみました。
「現場を直接見ていないので断言できませんが、写真でみると、トラッキングの可能性が高いです。トラッキングというのは、コンセントに刺しているプラグの上にホコリがたまって、そのホコリが湿気を帯びると電気を通してしまう、という現象のことですね。直前に大掃除をしたということでホコリが舞ってしまっただろうことと、湿気がたまりやすい環境だったということを考えても可能性が高いです。」(電気工事士)
この危険性についてバンコクにいる人なら毎日実感している、ある現象があるのですが、それはなにか、みなさんはお気づきでしょうか?
バンコクで活動していると、日本にいるときより飲み物のコースターを使うことが多くなっていませんか?
アイスコーヒーなど冷たい飲み物を置いておくと5分もするとコップや机が水滴でびしょびしょになりますが、日本だとここまでは、ならなかったはずです。
気温の高さの方が目立ってしまいますが、実はバンコクの年間平均湿度は72%です。四季の移り変わりが激しい東京だと44.4%から69.9%の間を行ったり来たりしていますので、バンコクは日本以上に湿気が高いのです。
このように、ホコリが少ししか溜まっていなくても容易に湿ってしまうという気候、そして、日本より高い220ボルトの強力な電圧であることが加わって、タイのコンセントや電化製品は極めて漏電をしやすく火事を起こしやすい状況にあるのです。
どのように火事を防ぐか 対策チェック項目
ではどのようにすればタイの高い電圧のコンセントからの漏電と火事発生を防ぐことができるのでしょうか。
今日からできる対策はいくつかのレベルがあります。
1 物件入手前の情報を入手
壁面内部で配電線が漏電する場合がありますので、経年劣化の状況、過去に同じ建物内で漏電がなかったか、さいごに点検をしたのはいつか、ということを物件入手前に情報をとる。
2 見える部分の漏電対策
古くて劣化したコンセントや延長コードを使っていないか。ホコリの溜まりやすい構造かどうかをチェック。
3 普段の清掃
ホコリの除去、湿気とり
4 電源の管理
可能であれば退出時にブレーカーを落とす。
タイでひとたび小火が起こると、日本のように警報装置やスプリンクラーがしっかりしている施設が少ないため、大きな火事に広がりやすいです。火災保険なども充実していないため、もし、延焼をしてしまったら、管理責任者は多額の賠償金を支払う羽目になります。また、タイ王国の法律では火災の火元の責任者は刑務所に収監されるそうです。タイ人のスタッフに店じまいを任せていたのに、ということは通用しません。
もし上記のチェック対策をしていくことが難しければ、はじめから情報をセットで手に入れられるところから物件を借りたり購入するようにする、という方法がおすすめです。
たとえばバンコククラブでは、居抜き物件の不動産売買の情報を提供する際に、上記のようなチェック情報も一緒にできる限り調査をしたり、防災対策の方法を助言して、ただ物件を紹介するだけではなく物件をトラブルなく使い続けるための情報をパッケージしている業者を紹介するようにしています。
すでに物件を利用されている方の場合でも、情報提供も行っていますのでお気軽にご相談いただければと思います。