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タイの最新EV充電スタンド場所マップ&電気自動車の普及と状況

タイの最新EV充電スタンド場所マップ&電気自動車の普及と状況

目次

タイのEV(電気自動車)や電動バイク充電スタンドの場所の地図、EVの種類とタイでの長所・短所、そしてタイでEV産業はこれからどうなるかについての政府の方針や規制についてまとめてみました。


タイの最新のEV充電スタンドマップ

タイの民間の人がまとめたものですが、随時更新されるので最新の場所がわかります。


EVとは?種類早わかり&タイでの長所・短所

EVには色々な種類があり略称が紛らわしいので簡単に整理しました。タイでの現状と利用する場合の長所・短所についてもまとめます。既にご承知の方は次の章へお進みください。


【EV(BEVともいう)】=バッテリー式電気自動車(電気)

バッテリーに充電した電気でモーターを動かして走る。【長所】排気ガスがない
【短所】現状は高価・性能により長距離に向かない・寿命がある(古いスマホと一緒)・廃棄バッテリーの処理が難しい
【タイの事情】バンコク・チョンブリーエリア以外の地方都市では充電スタンドがまだまだ少ない。このため地方での利用や都市間の長距離移動には現状は不向き。
一方、隣国ラオスの路線バスに中国がEVバスを無償提供するなどして、中国メーカーは東南アジア圏でのEVの普及戦略を進めている。▲ラオスの空港バスは中国寄贈のEVバス。


【HEV(HVとも)】=ハイブリッド車(ガソリン+電気)

メインはガソリンで走行し必要時に電動になる。ガソリンで走行時に発電するため充電不要で充電プラグもない。【長所】充電不要・ガソリン車と変わらぬ長距離走行が可能。
【短所】排気ガスがあるため、エリアにより将来規制される可能性がある(現在、EUでは2035年に禁止予定)
【タイの事情】タイでは地方の野焼きと都市の排ガスでの大気汚染が問題になっており、今後EUのように厳しいガソリン車禁止に踏み切る可能性は0ではない。(一部ディーゼル車などへの規制は2024年1月より開始)

【PHEV(PHV)】=プラグインハイブリッド車(ガソリン+電気)

充電プラグで充電する。ガソリンか電気の切替が可能。【長所】一般のガソリン車同様、長距離走行に向いている。場所により切替が可能。
【短所】排気ガスがあるためエリアにより将来規制対象になる可能性あり
【タイの事情】都市部では渋滞が多く、地方では町のないエリアの長距離移動が必要なタイでは電気とガソリン車の“いいとこどり”できるハイブリッドは需要に見合うと思われる。その一方でガソリン車規制が導入される可能性も高い。

【FCEV(FCV)】=燃料電池自動車(いわゆる水素自動車)

水素(あるいは水素の元になるもの)を充填し自動車内で化学反応を起こして発電しモーターを動かす仕組み。【長所】排出ガスなし・燃料の充填時間が短い・エネルギー効率がよい
【短所】水素は扱いが難しいため現技術では充填スタンドを多く増やせない。家庭では充電できない。
【タイの事情】水素スタンドは作られ始めたばかりのため、これから投資や拡充努力が必要。タイは原油を産出せず、ラオスの発電所から電力を輸入している国であり電気代も高いため、中長期的にEV補助制度が終了したとき、水素のコストを下げられるなら将来性がある。
三菱化工機らが2023年11月、バイオガスから水素を製造する装置をタイに導入開始。

【水素燃料車】=水素を燃料としたエンジン車

燃料電池自動車(FCEV)と違い、注入した液体水素自体を爆発させ水素用エンジンを動かす仕組み。EVは電気を火力発電所で発電するなら結局石油を使うが、二酸化炭素を出さない水素を使うことで根本的なCO2&資源対策となる。トヨタが開発中。

【長所】排出ガスなし・燃料の充填時間が短い・エネルギー効率がよい・バッテリー不要なので劣化や廃棄の問題がない。
【短所】現状は水素を作るコストが高い・扱いが難しく現技術では充填スタンドを多く増やしにくい。
【タイの事情】上記「燃料電池自動車」と同じ。

タイのEV化はどうなるのか

タイはEV化を推進するのかそれとも他の道を選ぶのでしょうか。
まず2024年の年初時点でタイ政府とBOI(タイ投資委員会)が打ち出している方針とおもな施策を整理します。

【タイ政府が掲げる目標】

・2030年までに自動車生産のEVの割合を30%に→その後50%に修正。
・ただしEVの上限を設ける。乗用車やピックアップトラックで50%、バイクで70%、バスで85%まで。残りはガソリン車とする。
・2030年までに直流EV急速充電器を全国で13,000基以上、そのステーションを約1,400ヵ所整備。
・2035年に自動車の国内販売を100%EVにする。

【自動車生産関連の措置】

・EVメーカーに減税(※1)・補助金(※2)などの優遇措置。ただし一定期間以内に、指定の主要部品をタイで生産することが条件。
・BEV(電気自動車)を輸入・販売した企業にも補助金あり。ただし、2026年以降バッテリー(セル・モジュール)をタイで生産する条件。
・HEV(ハイブリッド車)とPHEV(プラグインハイブリッド車)の優遇措置は縮小しつつも継続。
・ガソリン車の製造に必要な機械の輸入関税の免除を継続。

※1、関税を20%から40%に引き下げ、輸入EVの物品税を8%から2%に引き下げ中。
※2、補助金はEV1台につき7~15万バーツ、電動バイク1台につき1万8000バーツ

【EV充電スタンド関連の措置】

・充電事業者の法人税免税措置を最低3年、条件を満たせば最大5年間。
・充電事業者への補助金の給付条件やISO 18000規格取得の要件の緩和
・現在、MEA(首都圏配電公社)などが無料で使えるEV充電スタンドを一部で開設中。


タイがEV化を推進しつつガソリン車を捨てない理由

まとめると「タイはEV化を目指しているものの、ガソリン車やハイブリッド車の生産も保護する」という姿勢です。どちらにも偏らないということで中途半端にもみえます。
これはなぜかというと、タイは世界のガソリン自動車メーカーの工場であり、タイで生産された自動車の実に半分は輸出されているからです。▲2016年に開設されたホンダのプラチンブリ工場。オーストラリアへの輸出製品を生産。

現実問題、EUやアメリカ、中国などでEVが普及しても、他の東南アジアや中東、アフリカ、南米などの開発途上国では、特に急速充電スタンドが一気に整備されるとは考えにくく、長い将来にわたってガソリン車・ハイブリット車の需要はなくならないでしょう。
タイがガソリン自動車のサポートを行わなくなれば、この20年ほどで人件費が4倍(1997年の製造業労働者の平均月給は5,274バーツ)になったタイには魅力がないとして、各メーカーの工場が規模縮小・撤退するようなことになりかねません。タイは、世界のガソリン車の生産拠点のポジションを死守しつつ、同時にEVメーカーの市場として国を開放する代わりに、EVの部品製造のサプライチェーンをタイに構築させる、という微妙なバランスの「全方位戦略」をとっているといえるでしょう。

タイでのEV工場の稼働予定

2024年に稼働予定のメーカー
BYD(中国) 年間生産能力:15万台
合衆新能源汽車(中国) 年間生産能力:未定
広州汽車(中国) 年間生産能力:10万台
鴻海精密工業(台湾) 年間生産能力:5万台 ※タイ企業との合弁

2025年に稼働予定のメーカー
長安汽車(中国) 年間生産能力:10万台

今後、建設を検討中のメーカー
BMW(ドイツ)

▲BYD(中国)はタイでEV販売を2022 年 10 月から開始、2023年末時点でテスラ(米国)を抜いてタイでトップの31%のシェアとなっている。

このように世界のEVメーカーがタイでの生産体制を準備しています。特に中国企業の予定が多いです。2023年末現在、日本のメーカーはタイでのEV生産工場の新設予定はありません。既存のガソリン車工場の一部で少量生産、といったところです。
トヨタはピックアップトラック「ハイラックスREVO」のEV版をサムットプラカン県の工場の既存ラインで少量生産を開始、ホンダはプラチンブリ工場で近日EVの生産を開始するとしつつも、大々的な打ち出しはしていません。
その理由ですが、メディアの取材では日系メーカー幹部は「(タイでは)補助金がなくなればEVは売れず、リスクが高い」と回答しています。

トヨタは出遅れた?それとも戦略か?

EUでのEV化方針は、ハイブリッド車に強い日本メーカーを崩すためだったと言われています。そして今、トヨタはEV車開発に出遅れ、テスラや中国メーカーに差をつけられています。
でもそれは、先行EV車のトラブルを観察しつつ、ハイブリッド車の需要に対応する体制を維持しながら、次世代のバイポール型水素ニッケル電池車と、水素エンジン車の普及コストが下がるのを待っている、という多方位戦略なのだ、という分析があります。実際、2023年現在、中国・アメリカでは現行のEV車の販売が伸び悩みになり値下げも始まっています。タイでも購入したEV車の不具合に中国メーカーが対応しきれないというクレームが消費者からでています。▲2023年、トヨタの液体水素エンジン車が「耐久富士24時間レース」登場

まず、バイポール型水素ニッケル電池車というのは、EVと同じくバッテリーに充電することで走るものですが、既存のEVの電池とは異なる構造です。コンパクト化と軽量化しており、寿命も大幅に長くなっています。この電池を搭載した「レクサスLF-ZC」は2026年の販売予定で、20分間の充電で東京ー大阪間を往復する性能があります。独自開発のOSも装備されます。

液体水素エンジン車の方は、液体水素を注入し水素用エンジンを動かす仕組みです。CO2を排出せず、バッテリー不要なので消耗や廃棄の対策が不要、そして火力発電などで発電した電気を充電する必要がないため根本的な環境対策になるものです。しかし課題は、水素エンジン車はEV車と根本的に違うので、充填方式の普及に成功しないと、かつて性能で勝っていたSONYのビデオの「ベータ」が「VHS」に世界標準の座を奪われた歴史の二の舞になることが心配です。対策でもしかすると水素+EVのハイブリッド車が過渡期に登場するような気もします。▲テスラの新製品「サイバートラック」
テスラは自動車を機械ではなくIT端末として考えており、世界に広めてデータを吸い上げ、自動運転などの技術にしていくネットワークを作って独占することを狙っているのだという話もあります。ゲームのルールではなくゲーム自体を別次元のものに変える戦略なのだ、という分析もできます。ウオークマンやCDではなく皆がスマホで音楽をダウンロードして聴くようになった、みたいなことです。

当面は、タイの充電スタンドの拡張状況と、中期目標としてはトヨタ車がタイを制した牙城である11万台あるというタクシー、そして路線バスがどうなるか、といったところが注目でしょう。

未来がどうなるのかはわかりませんが、だからこその、タイは「全方位戦略」なのかもしれません。

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