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タイの映画館で国王賛歌が流れて起立するのはなぜ・理由と作曲者は

タイの映画館で国王賛歌が流れて起立するのはなぜ・理由と作曲者は

目次

タイで映画館に行くと映画上映前に、国王賛歌が流れます。
この曲が流れるとその場にいる全員が直立不動にならないといけませんが、これはなぜ始まったのでしょうか。歌詞と作られた歴史についてまとめてみました。


タイ国歌と国王賛歌は別物!

タイを訪れたり滞在していると、朝と夕方にタイ国歌を聴く場面があると思います。駅などで曲が流れている間、多くの人が直立不動になります。
日本人など外国人は、タイの国歌は国王陛下を称える歌なのでタイ人は直立不動にならないといけないのだ、と勘違いしている人も多いのですが、タイ国歌と国王賛歌は別の曲です
タイ国歌の方は、国民が主役であり独立を守ろうという趣旨の内容で、国王のことは歌っていません。
「国王賛歌」 สรรเสริญพระบารมี プレーン・サンソエン・プラー・バラミ
という歌があり、こちらがタイ王室を讃える歌です。

タイ国歌・・・役所、駅、学校、公園、TV、ラジオなどで8時・18時に流れる。
国王賛歌・・・王室の関連行事、王室が国賓を迎える際、映画館やコンサートの前などで流れる。

言語の問題もありタイに長く滞在している人でも映画館やコンサートには行ったことがないという人も少なくないと思いますが、駅などで流れる国歌と、映画館で流れる国王賛歌は違う曲です。

どちらにしても直立不動で聴くのが原則で、違反すると外国人でも最悪逮捕される可能性があります。


タイ国王賛歌の歌詞

タイ国王賛歌の歌詞の日本語訳は次の通りです。

ข้าวรพุทธเจ้า
御仏の僕(しもべ)たる我らは
เอามโนและศิรกราน
心より合掌し拝礼し申し上げる
นบพระภูมิบาล บุญญะดิเรก
国を治める高徳な王
เอกบรมจักริน
最高極上の王
พระสยามินทร์
シャムの大王
พระยศยิ่งยง
極上の王に
เย็นศิระเพราะพระบริบาล
陛下のご配慮で皆は安らぎ
ผลพระคุณ ธ รักษา ปวงประชาเป็นศุขสานต์
徳の深いご庇護により 民は皆、安寧である
ขอบันดาล ธ ประสงค์ใด
陛下にいかなるご所望も叶う霊なる力あれ
จงสฤษดิ์ ดังหวังวรหฤทัย
大御心の思し召しのまま
ดุจจะถวายชัย ชโย
勝利することを祈念申し上げ 万歳!


国王賛歌を作った人とは

国王賛歌が作られたのは1913年頃で、ナリッサラーヌワッティウォン公が作詞し、ロシア人作曲家のピョートル・アンドレーヴィッチ・シチュロフスキーが作曲した曲をラーマ6世が修正して完成しました。
ナリッサラーヌワッティウォン公/ナリット王子(1863年―1947年)はラーマ4世の子息です。シンガポールへ留学して土木技術を学んだあと建設省に入り、バンコクーナコンラチャシマ間の鉄道整備、ヤワラート通りの都市開発を行いました。西洋建築を取り入れ大理石でできたバンコクの寺院「ワット ベンジャマボピット」も彼が設計したものです。電信・通信設備の設置も指揮し、タイの近代化のインフラ整備を進めました。
この手腕がラーマ5世の評価を受け、財務大臣や国防大臣などを歴任しタイの近代化を支えました。
同時に一流の文化人でもあり、芸術を保護するだけでなく自分でもラコーン(タイの伝統的な舞踊劇)台本の執筆や音楽作曲も行って才能を発揮し、タイの芸術の父と言われています。彼が作詞した「国王賛歌」の歌詞をみると、古そうな言葉が使われていることが想像できます。宮中で使われていた古典タイ語の表現で書かれているため、現代のタイ語とは異なる表現があります。このためグーグル翻訳では意味がわからないくらい難解です。
こうしたナリッサラーヌワッティウォン公が作った歌であることもあり、伝統舞踊劇などの前に「国王賛歌」が演奏されるようになりました。


なぜ「国王賛歌」が映画館で流れるのか?

1932年、絶対王制だったシャムで民主革命が起きて立憲君主制のタイ王国となり、初めて民間人と政党が政治を担当することになりました。
政権をとった人民党のリーダーだったピブーンソンクラーム首相は、大変な権勢を誇り、一度は失脚しますが返り咲き、第二次大戦を挟んで20年以上も首相の座にありました。ピブーン首相はタイ国歌を作らせ、公共の場所で1日2回流すことを始めました。歌詞はタイでは国民が主役であるという内容です。
そして映画館では、政権の宣伝のために自分たちを称える曲と映像を映画の前に流したそうです。
ピブーン首相が1957年のクーデターで追放されたあと、ピブーン首相の曲と映像は流されなくなり、その代わりに伝統的な舞踊劇と同じように映画上映前に「国王賛歌」が流されるようになったのです。

今日でもタイ国歌は、公共の場所で毎日朝8時と夕方の6時に、国王賛歌は映画館などで毎日流されています。自由で活気あるタイ民衆と、敬愛され威厳のあるタイ国王、二つの輪でタイは成り立っているということを表しているようで興味深いです。

 

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